Atarashift 企業向けブログ
外国人採用のための実務ガイド
在留資格の基礎から選考、入社後の定着まで。外国人材の採用に取り組む担当者の方へ、実務で使える情報をお届けします。
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母国の家族を扶養に入れる外国人社員の年末調整。30〜69歳の国外居住親族の要件、親族関係書類・送金関係書類の提出時期、令和8年分の改正点を国税庁資料で整理します。
外国人社員が母国の家族を扶養に入れる場合、年末調整では書類の確認が欠かせません。国外に住む親族は「国外居住親族」として扱われます。扶養控除を受けるには、親族関係書類と送金関係書類の提出が必要です。
さらに、30歳以上70歳未満の国外居住親族には条件があります。留学している、障害者である、年38万円以上の送金を受けている、のいずれかに当たる場合だけが対象です。本記事では、国税庁の2つの資料をもとに確認手順を整理します。参照するのは『令和8年分 年末調整のしかた』と『国外居住親族に係る扶養控除等Q&A』です。
国外居住親族とは、非居住者である親族のことです。国内に住所がなく、1年以上の居所もない親族が当たります。外国人社員の場合、母国に住む両親、配偶者、子、兄弟姉妹などが典型的な例です。
親族の範囲は、日本の民法の定めと同じです。6親等内の血族、配偶者、3親等内の姻族が含まれます。国外居住親族でも、この範囲は変わりません。
また、社員本人が居住者かどうかも確認が必要です。年末調整の対象になるのは、国内に住所があるか、1年以上居所がある居住者です(ほかに申告書の提出などの条件があります)。国税庁は、外国人社員も同じ基準で判定すると明記しています。
令和5年分以後、国外居住親族の扶養控除には年齢による条件があります。控除の対象になるのは、次のいずれかに当たる人です(以下、30歳以上70歳未満を「30〜69歳」と表記します)。
どれにも当たらない30歳以上70歳未満の親族は、扶養控除を受けられません。令和8年分では、昭和32年1月2日から平成9年1月1日までに生まれた人が30歳以上70歳未満に当たります。
年齢は、その年の12月31日の時点で判定します。非居住者や障害者に当たるかどうかは、申告書を提出する日の状況で判定します。この申告書は「給与所得者の扶養控除等(異動)申告書」で、以下、扶養控除等申告書と呼びます。
ここでいう留学とは、日本に住んでいた親族が外国の大学や高校などに留学し、国内に住所・居所がなくなった場合です。現地で留学に相当する在留資格を持っていることも条件です。母国で暮らしたまま現地の学校に通う親族は、これに当たりません。外国の障害者手帳を持っているだけでは、障害者には当たらないとされています。
なお、16歳未満の子は所得税の扶養控除の対象外です。ただし住民税では、国外に住む16歳未満の親族について別の手続きがあります。令和9年3月15日までに、社員が市区町村へ書類を提出する必要がある場合があります。
確認書類は、法令で定められた4種類です。いつ何を受け取るかを、以下の表にまとめました。
| 親族の区分 | 扶養控除等申告書の提出時 | 年末調整時 |
|---|---|---|
| 16歳以上30歳未満、70歳以上 | 親族関係書類 | 送金関係書類 |
| 30〜69歳で留学 | 親族関係書類、留学ビザ等書類 | 送金関係書類 |
| 30〜69歳で障害者 | 親族関係書類 | 送金関係書類 |
| 30〜69歳で38万円以上の支払 | 親族関係書類 | 38万円送金書類 |
出典:国税庁『国外居住親族に係る扶養控除等Q&A』Q2、『令和8年分 年末調整のしかた』15ページ
親族関係書類は、社員とその親族の関係を示す書類です。次のどちらかが当たります。
外国の書類には、たとえば戸籍謄本に類する書類、出生証明書、婚姻証明書があります。運転免許証などの身分証だけでは足りません。親族関係書類は、パスポートの写しを除き、原本の提出または提示が必要です。
送金関係書類は、社員が親族に生活費などを送ったことを示す書類です。金融機関の外国送金依頼書の控えや、オンライン送金の利用明細などが当たります。ここでいう金融機関には、資金移動業者も含まれます。
クレジットカードの場合は、親族が使う家族カードで、代金を社員が支払うものが対象です。利用明細などで確認します。
38万円送金書類は、送金関係書類のうち、その年の支払の合計が38万円以上であることを確認できるものです。30〜69歳の親族を、38万円以上の支払を理由に扶養に入れる場合に使います。送金関係書類と38万円送金書類は、写しでもかまいません。
留学ビザ等書類は、外国の査証(ビザ)に類する書類や、外国の在留カードに相当する書類の写しです。30〜69歳の親族を、留学を理由に扶養に入れる場合に必要です。
書類が外国語で作られている場合は、訳文もあわせて提出または提示が必要です。国税庁のQ&Aでは、訳文がない場合は社員に提出を求めるよう示されています。
送金関係書類は、親族一人ひとりについて必要です。代表者にまとめて送金した場合、その書類は代表者の分としてしか認められません。たとえば母の分も含めて父に送金した場合、その記録は母の送金関係書類としては使えません。38万円送金書類も同じ扱いです。
38万円の判定は、その年中の支払の合計で行います。年末調整の時点で38万円未満なら、その親族は扶養控除を受けられません。
いつの支払かは、着金日ではなく送金日で判定します。12月に送金して着金が翌年1月になっても、その年の支払として扱います。クレジットカードは利用日で判定します。
送金手数料は、38万円送金書類で確認できれば支払額に含めてかまいません。一方、知人に現金を託して届けた場合や、本人の申立書しかない場合は認められません。
外貨で送金した場合は、円に換算して合計します。原則として、送金日の電信売買相場の仲値を使います。
何年分かをまとめて送金した場合、その送金は送金した年の支払としてのみ扱います。翌年以降の分に振り分けることはできません。
配偶者控除、配偶者特別控除、特定親族特別控除でも、対象者が国外居住親族であれば確認書類が必要です。いずれも年末調整の際に、親族関係書類と送金関係書類を提出してもらいます。扶養控除等申告書の提出時に親族関係書類を受け取っていれば、改めて提出してもらう必要はありません。
特定親族とは、19歳以上23歳未満で、合計所得金額が62万円超123万円以下の親族です。令和8年分では、平成16年1月2日から平成20年1月1日までに生まれた人が当たります。国外に住む大学生の子などが、これに該当し得ます。
来日したばかりの外国人社員にとって、年末調整は初めての手続きです。送金記録を後から集めるのは手間がかかります。年の途中から準備を促すと、12月の負担が減ります。
案内では、次の点を伝えると効果的です。
日本語に不安がある社員には、英語や母国語の案内を用意すると確認の手戻りを減らせます。国税庁も、国外居住親族の扶養控除について英語版のリーフレット(令和7年6月版)を公開しています。
年末調整は、その年最後に給与を支払うときに行います。通常は12月です。国外居住親族がいる社員には、次の順で対応すると漏れを防げます。
4つ目の手順は見落とされがちです。内容に変更がなくても、年末調整の際には送金額の合計を記入した申告書を出してもらう必要があります。
親族関係書類は、基本的に毎年必要です。内容に変更がなければ、前年に提出した書類を改めて提示してもらう方法もあります。
申告書は7年間の保存が必要です。国税庁は、確認書類も申告書とあわせて保存するよう求めています。
送金関係書類が年末調整までに提出されなければ、その親族は計算から外します。源泉徴収票を作る前に書類が提出されれば、計算をやり直してもかまいません。作成後であれば、社員本人が確定申告をして控除を受けます。
令和8年度の税制改正は、原則として令和8年12月1日に施行されます。令和8年分の所得税から適用されるため、12月の年末調整に影響します。
扶養親族の所得要件は、合計所得金額62万円以下に引き上げられました。給与収入のみの場合は136万円以下です。改正前は58万円以下(給与収入のみの場合は123万円以下)でした。国外居住親族にも同じ要件が適用されます。
基礎控除も引き上げられ、合計所得金額132万円以下の人の基礎控除額は104万円です。この引上げのうち特例による加算分は、居住者にだけ適用されます。
令和8年11月までの源泉徴収には変更がありません。改正の効果は12月の年末調整でまとめて精算されます。新たに扶養の対象になる親族がいれば、扶養控除等(異動)申告書を改めて提出してもらいます。
1年以上の予定で海外へ転勤する場合は、出国の日までに年末調整を行います。扶養控除などは、出国の時点の状況で判定します。この場合も、国外居住親族の送金関係書類が必要です。
令和8年は注意が必要です。最後の給与を令和8年11月30日以前に支払った場合、その年末調整では改正後の控除は適用されません。改正後の控除を受けるには、社員本人が確定申告などを行う必要があります。年の途中で出国する予定の社員には、早めに伝えておくと安心です。
留学している、障害者である、年38万円以上の送金を受けている、のいずれかに当たれば対象です。ここでいう留学は、日本に住んでいた人が外国に留学した場合に限られます。どれにも当たらなければ、扶養控除は受けられません。38万円で判定する場合は、年末調整時に38万円送金書類が必要です。
原則として原本が必要です。例外はパスポートの写しです。送金関係書類と38万円送金書類は、写しでもかまいません。
送金関係書類は親族ごとに必要です。父にまとめて送った場合、その記録は父の分としてのみ扱われます。母も扶養に入れるなら、母あての送金記録も必要です。
外国語の書類には訳文が必要です。訳文がない場合は、社員に訳文の提出を求めます。
申告書は7年間の保存が必要です。確認書類も申告書とあわせて保存するよう国税庁が求めています。
外国人材の採用と定着には、こうした手続きを社員と一緒に確認する体制が役立ちます。入社時の手続きは「外国人の中途採用の手続き」をご覧ください。入社後の支援は「外国人社員の定着」で解説しています。外国人材の採用をお考えの企業は、Atarashiftで日本での就職を目指す人材と出会えます。
本記事は一般的な情報の提供を目的としており、個別の税務判断は税務署または税理士にご確認ください。内容は令和8年11月4日時点の国税庁資料で確認しています。
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