Atarashift 企業向けブログ
外国人採用のための実務ガイド
在留資格の基礎から選考、入社後の定着まで。外国人材の採用に取り組む担当者の方へ、実務で使える情報をお届けします。
Atarashift 企業向けブログ
在留資格の基礎から選考、入社後の定着まで。外国人材の採用に取り組む担当者の方へ、実務で使える情報をお届けします。
外国人社員の定着を妨げる要因を、厚生労働省の調査データから整理。入社前の説明、相談窓口、日本語学習、生活支援など、入社後1年で企業ができることを解説します。
外国人社員の定着を左右するのは、入社前の説明と、入社後1年の支援です。厚生労働省の調査では、外国人材を雇う事業所の43.9%が、日本語でのコミュニケーションを課題に挙げています。働く側では、困ったことがあった人の14.9%が「どこに相談すればよいかわからなかった」と答えています。
つまり、定着の鍵は「言葉」と「相談先」です。この記事では、公的な調査データから定着を妨げる要因を整理し、入社前と入社後1年に企業ができることを時期ごとに紹介します。
この記事のポイント
- 外国人労働者の平均勤続年数は3.3年で、一般労働者全体の12.4年より短くなっています。ただし、新しく入社した人が多いことも影響しています。
- 外国人材を雇う事業所の課題の1位は「日本語能力等のためにコミュニケーションが取りにくい」で、43.9%でした。
- 就労上のトラブルがあった外国人材のうち、14.9%は「どこに相談すればよいかわからなかった」と答えています。
- 主要企業の調査では、外国人留学生の入社3年後の離職率が日本人新卒より「高い」企業は13.8%、「低い」企業は15.5%でした。
- 日本語学習の支援は、2026年6月14日から外国人雇用管理指針で事業主の努力義務として明記されています。
外国人社員の離職率を直接示す公的な統計はありません。ただし、関連するデータから傾向はつかめます。
厚生労働省の「令和6年賃金構造基本統計調査」によると、外国人労働者の平均勤続年数は3.3年でした。一般労働者全体の12.4年と比べると、大きな差があります。平均年齢も、外国人労働者は32.8歳で、全体の44.1歳より若くなっています。
この数字は、そのまま「すぐ辞める」ことを意味するわけではありません。外国人労働者数は2025年10月末に257万人を超え、1年で11.7%増えました。入社したばかりの人が多ければ、平均勤続年数は短くなります。
新卒採用に限ると、日本人と大きな差はないというデータもあります。株式会社キャリタスは2024年12月、主要企業に外国人留学生の入社3年後の離職率を尋ねました。日本人新卒社員より「高い」と答えた企業は13.8%、「低い」と答えた企業は15.5%でした。定着するかどうかは、国籍よりも受け入れ方によるところが大きいと考えられます。
外国人労働者数の推移は、外国人雇用状況(2025年10月末)の記事で詳しく解説しています。
厚生労働省の「令和6年外国人雇用実態調査」は、事業所と外国人労働者の両方に課題を尋ねています。双方の回答から、主な要因は次の4つに整理できます。
事業所が挙げた課題の1位は「日本語能力等のためにコミュニケーションが取りにくい」で、43.9%でした。「文化、価値観、生活習慣等の違いによるトラブルがある」も20.9%にのぼります。「離職・転職が懸念される、定着しない」と答えた事業所は14.6%でした。
就労上のトラブルや困ったことが「あった」外国人材は、全体の10.9%でした。「技術・人文知識・国際業務」で働く人では13.2%と、やや高くなっています。
トラブルの内容を見ると、専門的・技術的分野の在留資格では「事前に労働時間やその他の就業条件について説明がなかった」が11.3%でした。全体では「事前の説明以上に高い日本語能力を求められた」も8.8%あります。入社前の説明が、入社後の不満の種になっていることがうかがえます。
トラブルがあった人のうち、14.9%が「トラブルや困ったことをどこに相談すればよいかわからなかった」と答えています。専門的・技術的分野でも14.8%です。困りごとを抱えたまま相談できず、そのまま離職につながるケースは防ぎたいところです。
事業所の19.9%が「生活環境の整備にコストがかかる」ことを課題に挙げています。住まい探し、役所の手続き、銀行口座の開設など、日本での生活の立ち上げは外国人材にとって大きな負担です。仕事以外の不安が、定着を妨げることもあります。
定着への取り組みは、内定の段階から始まっています。入社前に次の3点を押さえると、入社後のずれを減らせます。
労働条件を、本人が理解できる言語で書面にする。 賃金、労働時間、休日、残業の扱いを、日本語と英語など本人が理解できる言語で示します。厚生労働省は、外国人向けの労働条件通知書のモデル様式を多言語で公開しています。
仕事で日本語を使う場面を具体的に伝える。 「社内会議は日本語」「顧客対応は英語」のように、使う場面を事前に伝えます。「思っていたより日本語が求められた」というずれを防げます。求める日本語レベルの決め方は、外国人採用で求める日本語レベルの記事で解説しています。
入社までの費用と期間を説明する。 在留資格の手続きにかかる期間や、渡航費などの負担を事前に共有します。調査でも、費用や期間に関する「事前の説明以上」の負担が、トラブルとして挙がっています。
入社後1年を、時期ごとに区切って支援するのが効果的です。以下は、編集部が公的な調査と指針をもとにまとめた目安です。
| 時期 | 企業がすること |
|---|---|
| 入社初日〜1週間 | 相談窓口の担当者を紹介する。住居地の届出、銀行口座、社会保険の手続きを案内する。 |
| 1か月 | 上司または先輩によるメンター面談を行う。仕事の進め方や社内のルールで困っていないか確認する。 |
| 3か月 | 業務の到達目標を一緒に確認する。日本語学習の計画を立てる。 |
| 6か月 | 評価の基準と、今後のキャリアの見通しを説明する。 |
| 1年 | 評価面談を行い、次の1年の目標と役割を決める。在留期間の更新時期も確認する。 |
特に大切なのは、相談窓口を「人」で示すことです。「困ったら人事へ」ではなく、「困ったらこの人へ」と、顔と名前が分かる担当者を決めておきます。母語や英語で相談できる窓口があれば、なお安心です。外国人労働者を常時10人以上雇用する企業は、指針により雇用労務責任者を選任することになっています。この責任者を相談体制の軸にするのも一つの方法です。
評価とキャリアの説明も欠かせません。日本企業の昇進や評価の仕組みは、外国人材には分かりにくいことがあります。何ができれば評価され、数年後にどんな役割を担えるのかを言葉で示すことが、長く働く動機になります。
2026年6月14日から、外国人雇用管理指針で、日本語学習の支援に努めることが事業主の努力義務として明記されました。日本語能力に配慮した教育訓練の実施にも努めることとされています。
費用をかけなくてもできる支援は多くあります。
指針の改正内容は、外国人雇用管理指針の改正に関する記事にまとめています。
入社直後は、生活の立ち上げに多くの手続きが重なります。本人は、住居地を定めてから14日以内に市区町村へ届け出る必要があります。そのほか、銀行口座の開設、携帯電話の契約、健康保険証の受け取りなども続きます。
企業ができる支援は、次のとおりです。
生活の不安が小さくなると、本人は仕事に集中できます。生活支援は福利厚生ではなく、定着のための投資と考えるのが現実的です。
在留資格の手続きは、本人にとって大きな不安の種です。事業所の側でも、21.5%が「在留資格によっては在留期間の上限がある」ことを、24.7%が「在留資格申請等の事務負担が面倒・煩雑」であることを課題に挙げています。
「技術・人文知識・国際業務」には、更新の回数に上限がありません。要件を満たし続ければ、同じ会社で長く働くことができます。会社が更新の時期を把握し、必要な書類を早めにそろえるだけで、本人の不安は大きく減ります。
家族の呼び寄せも、定着を左右します。「技術・人文知識・国際業務」などの在留資格を持つ人の配偶者や子どもは、「家族滞在」の在留資格で日本に住むことができます。家族と暮らせる見通しがあると、長く働く判断をしやすくなります。
将来の永住も、長期的な目標になります。永住許可は、原則として10年以上日本に住み、そのうち5年以上を就労資格などで在留していることが条件の一つです。高度専門職のポイントが80点以上なら1年、70点以上なら3年で申請できる特例もあります。
外国人材の採用から定着までを見据えて人材を探したい企業は、Atarashiftで、日本で働きたい海外人材とつながる方法もご覧ください。
一概には言えません。主要企業の調査では、外国人留学生の入社3年後の離職率が日本人新卒より「高い」企業は13.8%、「低い」企業は15.5%でした。受け入れ体制によって、結果は大きく変わります。
離職理由を直接尋ねた公的な統計はありません。ただし、事業所の課題の1位は日本語でのコミュニケーション(43.9%)でした。働く側では、入社前の説明と実際のずれや、相談先が分からないことがトラブルとして挙がっています。
2026年6月14日から、外国人雇用管理指針で事業主の努力義務として明記されました。罰則はありませんが、定着にもつながるため、できることから取り組むのがおすすめです。
必須ではありませんが、効果的です。調査では、困ったときに相談先が分からなかった人が一定数います。顔と名前が分かる相談相手を決めておくことが、早期離職の予防につながります。
法律上の義務は限られていますが、入社直後の住まいと役所の手続きは、支援の効果が大きい分野です。すべてを会社が担う必要はなく、手順の案内や同行だけでも十分な支えになります。
事業所の課題と、外国人労働者のトラブルの有無と内容は、厚生労働省「令和6年外国人雇用実態調査」(2025年8月29日公表)の第10表と第20表によります。調査は、雇用保険被保険者5人以上で外国人を1人以上雇用する8,877事業所と、その外国人労働者44,038人を対象に行われました。トラブルの内容の割合は、トラブルが「あった」と答えた人に占める割合です。
平均勤続年数と平均年齢は、厚生労働省「令和6年賃金構造基本統計調査」(2025年3月17日公表)によります。外国人労働者数は、厚生労働省「「外国人雇用状況」の届出状況まとめ(令和7年10月末時点)」によります。
入社3年後の離職率の比較は、株式会社キャリタスの「外国人留学生/高度外国人材の採用に関する企業調査」(2024年12月、主要企業486社が回答)によります。永住許可の条件は、出入国在留管理庁の「永住許可に関するガイドライン」(2026年2月24日改訂)によります。雇用労務責任者の選任は、厚生労働省のパンフレット「外国人雇用はルールを守って適正に(令和8年6月版)」によります。日本語学習支援の努力義務と無料の学習サイトは、厚生労働省のリーフレット「外国人雇用管理指針改正の主なポイント」によります。情報は2026年9月30日時点のものです。
2025年10月末の外国人労働者数は257万1,037人で過去最多。厚生労働省の届出状況をもとに、推移と在留資格・国籍・産業・地域別の内訳、企業が読み取るべきポイントを解説します。
外国人採用でN1は本当に必要か。主要企業の採用基準、職種別の目安、2026年4月からの在留資格審査での語学力の扱いまで、日本語レベルの決め方を解説します。
海外の外国人材を採用するときの在留資格認定証明書(COE)の申請から入社までの流れを解説。審査期間の実績、カテゴリー別の書類、2026年4月の変更点も紹介します。